
医療事務歴約20年のライター、櫻井しおです。
産休育休を経て現在総合病院にて勤務中。複数の病院にて業務を行ってきました。約10年間、現場のマネージャーを務めた実績もあります。
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未経験から目指せる医療事務は、需要が多く、人気のある仕事です。
しかし専門的な知識やスキルが必要であるため、「誰でもなれる=簡単な仕事」というわけではありません。
そこでこの記事では、私自身の経験をもとに、医療事務の仕事内容についてわかりやすくまとめました。
医療機関によっても仕事内容が異なるため、総合病院とクリニックに分けて1日の流れを詳しく紹介します。

医療事務の仕事に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

医療事務の主な仕事内容を5つ紹介

医療事務の主な仕事内容を5つに分けて紹介します。
働く場所によって少し異なる部分はありますが、一般的な仕事内容を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

受付業務
病院やクリニックの窓口で、来院した患者さんの受付を行います。
医療事務の仕事としてもっともイメージされやすい仕事内容です。
病院やクリニックでは、主に以下のような業務を行います。
- 月に1度、保険証の確認をする
- コンピュータで受付処理をする
- 診察室に患者さんが来たことを伝える
- 患者さんを待合に案内し、順番までお待ちいただくように説明する
初めて受診する患者さんは、申込書や問診票の記入が必要です。
保険証や住所などの情報を医事コンピュータに入力し、患者カルテを作成します。

受付時の対応が患者さんの第一印象になるため、まさに「病院の顔」ともいえる仕事です。
会計業務
診察が終わった患者さんの診察料を計算します。
カルテからその日に行われた診療内容を読み取り、医事コンピュータに入力すると、必要な費用が算出される仕組みです。
診察料は国が定めた基準に従い、診療内容が記載されたカルテから計算しています。
会計の待ち時間を少なくするためにも、速さと正確さの両方が必要になる業務です。
診療報酬請求業務
診療費のうち、会計で支払った費用以外は、患者さんが加入している保険者が負担することになっています。
患者さんは1〜3割の自己負担分を窓口で支払っており、残りの7〜9割を月に1回まとめて保険者へ請求するのが「診療報酬請求」の仕事です。
1か月分の費用を翌月の10日までに請求するという決まりがあり、国が定める基準に従い請求金額を算出します。
患者さんごとに請求書を作成し、保険者あてに送付。
患者さんごとに作成される書類を「診療報酬明細書」といい、現場では「レセプト」とも呼ばれています。
外来クラーク業務
外来クラーク業務は、比較的大きい病院で発生する業務です。
総合受付とは別に、診療科ごとの窓口がある病院をイメージするとわかりやすいかもしれません。
各診療科に分かれた窓口で、患者さんと医師・看護師との橋渡し役をするのが主な役割です。
具体的には以下のような仕事を行います。
- 受付業務
- 電話応対
- 患者さんの呼び出し
- 検査や会計への案内
- カルテやレントゲン、検査データの準備
- 患者さんに依頼された書類への記載を医師に依頼
- 発行された紹介状や診断書に誤りがないか確認し、患者さんに渡す
病棟クラーク業務
病棟クラーク業務は、一般的に病棟のナースステーションで働く医療事務スタッフをイメージするとわかりやすいでしょう。
入院する患者さんとその家族、医療スタッフとの橋渡し役になります。
主な業務は以下のとおりです。
- 入退院に必要な書類のやり取り
- 費用の説明
- 施設の利用案内
- 患者さんや家族からの問い合わせ応対
- 面会への応対
入院費用が高額になることで不安になる患者さんが多いため、ていねいに説明することが大切です。
支払方法や支払い期限、個室代などをきちんと理解しておく必要があります。
また、高額療養費制度や公費負担医療制度など、利用できる制度についても深い知識が必要です。

外来に比べて、患者さんと深く関わることが多くなります。
【総合病院】医療事務スタッフの仕事内容と1日の流れ

私が勤務している総合病院を例に、医療事務の1日の仕事の流れを紹介します。
規模が大きい総合病院にはたくさんの患者さんが来院するため、分業制を導入しているところがほとんどです。
ここでは以下の3つのケースに分けて1日の流れを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

新患受付の場合
まずは、新患受付の業務を担当する場合の1日流れです。
予約がある患者さんは再来機にて受付をします。
基本的に患者さん自身で受付をしてもらいますが、機械の使い方や診察室への案内を行うため、早番のスタッフが対応します。
新規の患者さんや予約せずに来院した患者さんは、新患受付窓口にて受付をします。
受付開始前に来院した方を順番通りに処理できるように準備したり、時間までお待ちいただくように案内したりします。
来院した患者さんを順番に受付していきます。
保険証の提示、申込書や問診票の記入をしていただき、情報をもとにカルテを作成していきます。
医事コンピュータにて登録後、受付が完了した患者さんを各診療科へ案内するまでが新患受付の業務です。
誤入力に注意して迅速に処理を行います。
患者さんをお待たせしないことが大切です。
受付終了後も緊急の患者さんが来院することがあるため、交代で受付に残って業務をします。
午後は基本的に新患を受け入れていないため、午前のような忙しさはありません。
それでも受付は不在にせず、問い合わせの電話にも対応できるようにします。
その日に来院して受付をした患者さんの書類を整理し、新患受付業務は終了です。
翌日の業務のために、コピー用紙の補充や整理整頓を行います。
早番で出勤したスタッフは定時より早く帰れるのがメリットです。
会計(計算)の場合
会計(計算)業務を担当する場合の1日の流れです。
計算業務には早番がありません。
業務開始後もすぐに患者さんは会計に回ってこないため、ほかの部署に比べてスタートはゆっくりです。
そのため、会計業務では時間差出勤を導入でき、9:00に出勤するスタッフもいます。
計算業務が始まるまで、受付開始後で特に忙しい新患受付の業務をフォローすることもあります。
診察終了後の患者さんが徐々に会計に訪れます。
カルテの内容から診療費を計算しますが、患者さんを待たせないことと、正しく計算することが重要です。
計算が完了したら、お支払いの窓口か自動精算機へ案内します。
規模の大きい病院では、午前に受付した患者さんが午後まで診察していることが多々あります。
その間も、会計(計算)の業務が途切れることはありません。
夕方頃まで交代で休憩をとり、不在にならないようにします。
点数計算の業務だけでなく、同時に診療費の問い合わせや外線電話への対応も行います。
診察が終わらない患者さんがいるときは、当直担当のスタッフへ申し送りをして、会計(計算)業務が終了します。
コンピュータ周囲の清掃や、終礼がある病院もあります。
各診療科クラークの場合
各診療科でクラーク業務を担当する場合の1日の流れです。
総合病院では各診療科ごとに窓口があり、診療が円滑に進むようにクラークが配置されています。
予約の患者さんは再来機にて受付を済ませ、各診療科の待合室で待っています。
外来クラークは以下のような業務を行います。
- 受付業務
- 電話応対
- 患者さんの呼び出し
- 検査や会計への案内
- カルテやレントゲン、検査データの準備
- 患者さんに依頼された書類への記載を医師に依頼
- 発行された紹介状や診断書に誤りがないか確認し、患者さんに渡す など
午前の受付終了後も診察を待つ患者さんは多くいます。
休憩をとるときは交代制です。
会計への案内や問い合わせ対応があるため、業務終了まで窓口が不在になることはありません。
最後の患者さんを会計に案内して業務終了になります。
翌日に予約がある患者さんの準備や備品の補充を行ない、看護師に窓口が終了したことを報告して終了です。
【クリニック】医療事務スタッフの仕事内容と1日の流れ
クリニックでは、ほぼすべての業務を少人数のスタッフで行います。
診療開始より早めに出勤し、診療の準備を全員で行います。
- 病院内、敷地内の清掃
- 当日に予約がある患者さんの把握、準備
- レジの金銭の準備
- 診療に使用する器具、機械の準備 など
受付開始後の医療事務の主な仕事内容は以下のとおりです。
- 保険証や診察券の確認
- 申込書や問診票への記入依頼
- カルテの作成と診察券の発行
- 患者さんの容体を確認し、必要があれば医師や看護師に報告
- 診察室への案内
- 診療費の計算、会計
- 処方箋の受け渡し、有効期限などの説明 など
午前診療では検査の予約も多いため、患者さんが持参した書類の管理や着替えの案内をすることもあります。
総合病院との違いは、会計で金銭授受の業務があることです。
計算をして、すぐにレジで会計を行います。
午後の診察開始まで時間に余裕があるため、ゆっくり休んだり、外出したりできます。
休憩中でも問い合わせの電話が入ることもあり、緊急で対応しなければならないケースもあります。
また、午後の診察開始前にレジのお金を補充し、待合いスペースを整えておく業務も大切です。
午後診療も基本的に午前診療と同様に、受付・会計業務をしながら患者さんの応対をします。
手が空いた場合は翌日の準備も行います。
院外検査の依頼や物品注文をするのも医療事務の仕事です。
- レジを閉めて医師に報告
- 翌日の予約確認と準備
- 院内の清掃、ミーティング など
レセプト業務があるときは、1〜2時間程度の残業が発生します。
毎月10日までに提出する必要があるため、月末・月初が繁忙期となり、残業になることが多いです。

医療事務として働くメリット

医療事務として働くメリットを紹介します。

未経験でも働きやすい
医療事務として働くうえで、資格は必須ではありません。
しかし、採用担当をしてきた私の経験上、資格保有者のほうが採用で優遇される傾向があります。
医療事務資格は、国家資格ではなく民間資格です。
その種類はとても豊富ですが、比較的合格率の高いものばかり。
短期間で資格取得を目指せるため、少しでも早く仕事に就きたい方にとって働き始めやすい職種です。

なかには医療事務として働き始めてから、資格を取得する方もいます。
これから医療事務の資格取得を考えている方は、おすすめの医療事務資格を紹介する記事もぜひチェックしてみてください。

ライフスタイルに合わせた働き方を選べる
医療事務の働き方には、正社員・派遣社員・パートアルバイトなど、さまざまな雇用形態があります。
「午前だけ働きたい」「週3日だけ働きたい」などの希望が通りやすい職種です。
求人数が多いため、数ある選択肢から探すことができるでしょう。
ライフスタイルにあわせて働き方を変えることができるのが、医療事務として働く大きなメリットの1つといえます。
日本全国どこでも働くことができる
医療機関は日本全国にあります。
転居などで転職しなければならない場合でも、次の仕事が見つけやすく、再就職に強い職種です。
病院やクリニックでの業務は、地域に関わらず共通のルールがほとんど。
ほかの医療機関に就職したとしても、それまでの知識や経験は無駄になりません。
接客・販売業の経験は歓迎される
医療事務未経験でも、接客・販売業の経験がある方は歓迎される傾向があります。
なぜなら医療事務は、コミュニケーションスキルが求められる仕事だから。
患者さんだけでなく、医師や看護師など、多くの方との橋渡しが必要です。

接客・販売業の経験者は、面接のときにアピールしてみましょう。
医療事務として働くデメリット

医療事務は未経験者でも働きやすい仕事ですが、デメリットに感じる部分もあります。
働き始めてからギャップを感じないように、事前に確認しておきましょう。

給与が低い
医療事務のデメリットとして1番に挙げられるのは「給与の低さ」です。
医療事務の平均年収はおよそ200〜300万円と言われており、ほかの一般企業の事務職の平均年収329万円と比べると低い水準です。
給与の低い理由として、医師や看護師と違って民間資格で働けるため、専門職ではないことが大きいでしょう。

つまり、「誰にでもできる仕事である」ということです。
実際に働き始めてから、仕事の大変さと給与が見合わないという理由で辞めていく方も多くいます。
また、医療事務として働く方のほどんどがパート勤務であるため、正社員の割合の少なさが平均年収の水準を下げているのも1つの理由です。
毎月繁忙期がある
特にレセプト業務のある月初は残業が必要なほど忙しくなるため、休みの申請がしづらい期間です。
医療機関によって異なりますが、月初には毎日1〜2時間程の残業が発生します。
年末年始やGWも繁忙期と重なるため、必ず休みにはなりません。

希望する医療機関があるときは、毎月どのくらい残業があるか事前に確認しておくことが大切です。
覚えることが多いので大変
一般的な「事務」という言葉からイメージする仕事内容と、医療事務の仕事内容は大きく異なります。
2年ごとに医療制度が改正されるため、診療報酬のルールはその都度覚えなければなりません。
通常の業務でも、カルテやレセプトの作成、クラーク業務など、覚えることが多くあります。
日々の業務を覚えながら、制度の変化にも柔軟に対応するスキルが必要です。

医師や看護師との連携も必要であるため、大きい病院で働くほど覚えることが多くなるでしょう。
コミュニケーションが苦手な方には向いていない
医療事務の仕事では、コミュニケーションスキルを求められる場面が数多くあります。
一人ひとりに合わせたコミュニケーションが重要です。
一般的な事務よりも人と接する機会がかなり多く、さまざまな立場の方との関わりがあります。
- 患者さん
- 患者さんのご家族
- 医師
- 看護師
- 薬剤師
- 理学療法士 など
ときには理不尽なことでクレームが発生し、板挟み状態になることも少なくありません。
医療事務として働くうえで、クレーム対応のスキルも必要です。
まとめ:医療事務の仕事内容や1日の流れを知り、イメージしてみよう

医療事務の主な仕事内容は、医療機関での受付や会計業務です。
未経験者でもできる仕事ですが、一般的な事務とは異なり、専門的な知識が必要になります。
この記事を読んで、自分に医療事務の仕事ができるのか心配になった方もいるかもしれません。
医療事務に向いている人・向いていない人の特徴についてまとめた記事もありますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。

また、男性で医療事務を目指す方は、女性とは少し違った心構えも必要です。

なお当サイトでは、医療事務として勤務経験がある方を対象にアンケート調査も行っています。
医療事務のやりがいや大変なところなどを聞いていますので、医療事務の仕事内容をもっと詳しくイメージしたい方はぜひそちらもご覧ください。



